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『ラグを支持体として作品を制作して欲しい』

そんな制作依頼に応じてくれたアーティストは、どのように今回の作品を考え、制作したのか。

第一回では『A Painting for Shadow』の作家である那須佐和子さん(以下那須)にお話を伺いました。


絵画の歴史や背景を重視しながら絵画制作をする那須佐和子さんとの会話で見えてきたのは、空間と絵画の関係性に基づいた絵画やラグの原画制作についての考えでした。

EDITION
ed./50
SIZE
W100cm×D80cm
W140cm×D112cm
W175cm×D140cm

 

那須佐和子さん
経歴
1996年 東京都 出身
2021年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2023年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画第一研究室 修了
同学O氏記念賞奨学金 認定

展示歴(一部)
<個展>
2023
「Sunny, Rainy,」biscuit gallery, 東京
2022
「slipped moonlight」銀座 蔦屋書店, 東京
「灯台へ」myheirloom, 東京
<アートフェア>
ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023
Kiaf Seoul 2023
アートフェア東京2023

 

 

制作とコンセプトについて


-----ラグの原画を制作するにあたって、那須さんはどのように組み立てていきましたか?先にコンセプトがある場合や、描きながら思考する場合などがあると思いますが。


那須:こればっかりはコンセプトが先にありましたね。何描けばいいかわからないから、とりあえずキャンバスを床に寝かせて。前々から画面に落ちる影のようなものを描きたかったのですが、影を絵に描く人は結構いますし、そこに必然性がないなと思っていたんです。

影が床に落ちると、影が伸びて、そこに平面だけど、パースができるじゃないですか。

それが遠近の表現に使えそうだなって思ったのが始まりです。ただ、木漏れ日などをただ描くだけだと騙し絵のようになってしまう。自分は層を重ねて作っていくタイプなので、層を作って新しい絵を描くというアプローチにしました。


------今回のラグの原画制作の場合、様々な点で普段の制作と違うところもあったと思いますが、実際に制作をしてみて何か違いを感じたところはありましたか


那須:今回は展示ではないですが、プロダクトの特性として、床置きといった場所の特性が限られるので、その制約が普段と違うところでした。より明確にやる意味を見出さないといけないところも普段の制作と異なるところでした。


------普段の制作でも、コンセプトを先に考えるものですか?


那須:普段もそうですね、何も考えずに描くということはないです。最近は例えば展示があって、展示の設計を考えて絵のモチーフを決めるということが多いので、最近はそっちに偏らないように何も考えずに描く絵も増やしていますが、決めてかかりがちですね。


------つまり自分の中に納得できる必然性がある状態で制作することが多いということですね


那須:そうですね、必然性が生まれないと手を出したくないです。納得感や自分がする意味がある状態です。



------展示ではそういうやる意味であったり、コンセプトやステートメントというのはどこまで説明していますか?


那須:基本的に展示とかでも詳しく説明したくないんですよ。ただ、質問されたら答えます。「求めよ、さらば開かれん」みたいな笑。人に見方を強制したくないという考えがあるので。


------キャプションなども普段の展示ではつけないですか?例えば作品ごとに注釈のようなものを入れたりだとか。


那須:各々にはつけないですが、展示全体のステートメントは公開しています。


------普段の作品の共通コンセプトやステートメントなどはありますか?


那須:この質問が一番難しいです笑。


------難しいというのは。


那須:自分の立ち位置を固定してしまう気がして。それこそ作品や展示ごとに違うので、普段といえば人物画と風景画に絞って絵を描いていますと言っています。その2種類に絞る理由は歴史があり、過去の画家たちがいろんな回答を指し示しているジャンルだから。そこに新しい解釈を差し込むことができると考えているからです。


------なるほど。展示ごとに違うということですが、どういうところから着想を得てステートメントや方向性を作っていきますか?


那須:熟成期間が長くどこから来ているのかはわからないですが、いくつかやりたいなという考えやアイデアは常にあるので、そこから展示に合うアイデアを選んでいくというやり方をしています。


------今回のラグでも考えていたアイデアなどから持ってきたんですか?


那須:普段蛍光灯を使わず、間接照明を使って絵を描いていると、絵に影が差し込んでいることがあって、その時の絵がかっこいいと思っていたので、今回それをできる理由を見つけたという感じです。


------たしかに那須さんの絵は特に光によって絵の表情が変わる感じがします。




ラグと原画の関係性について


-----制作プロセスの中で影とか光をモチーフにして描こうと決めて、その制作の中で新たに感じ取ったことはありますか?我々としては、普段とは違うラグの制作のプロセスの中で、新たな表現の幅であったり気づきをアーティストが獲得できたらいいなという想いがあります。


那須:テキスタイルをやってる方っていっぱいいるじゃないですか。自分にはできないなって思いました笑。制作の際、光の跡だけで攻めようと思ったんですが、ここまでやるとただのコンポジションの問題というか平面的な構成になっちゃうとか、難しかったです。デザイン的には多分うまくいってないんですよ。それが許されていいのか、これは芸術ですと称していいのかと考えました。


テキスタイルデザインになりきらずに、自分の作品として成立するっていうバランスが難しかったです。


-----そこにはラグとしてアートが擬態してほしいという考えがあるからですか?


那須:テキスタイルデザインぽく作ろうというのは、絵と違って天地がないので上下が逆でもおかしくないようにするということですね。それが苦労しました。


-----今回の制作が、今後の制作に何か影響を与えることはありましたか?


那須:やっぱり今回の制作でも必然性を考えましたが、前からも必然性がないと手を出さないようにしていたので、そんなに変わらないかもしれないです。今回のは制約がありましたが。


-----今回の特殊な構造の一つとして、原画とラグという関係性があると思います。那須さんはこの関係性をどう捉えていますか?


那須:私は、原画をお披露目したくないなと考えているんです。ラグのための原画ですから、主役はラグだと思います。原画をラグに近づけたという流れだったので、普通の制作とは違うなって思って取り組みました。

最終的なメディアはラグであるし、完璧にラグに複製されると思って制作していないというというのは新しいですね。原画は影絵の装置であるというか。



-----ラグは床にも置けるし壁にもかけられますが、どのように置いてほしいなどありますか?また那須さんなりのアドバイスなどもあれば教えてください。


那須:そこは人それぞれに楽しんでいただければ笑。せっかく光と影とかをモチーフにしたので、光が差し込む場所に置いてくれたら嬉しいです。


-----やはり制作の時点でそこにさらに光が差し込むことも考えていたんですか?


那須:そうですね、それは考えていました。


-----面白いですね。置く場所や時間で光の形も変わりますし、変化を楽しめそうです。



作品と空間について

------那須さんは舞台芸術に携わっていたりと空間も得意だと思うのですが、空間も絵に合わせて考えたりしますか?


那須:そこは逆で、芸術作品が空間に影響を与えるのではなく、空間によって規定されている、空間が芸術作品に影響を与えると考えています。

この前京都で展示をやる話が出たんですが、その会場が畳と障子とで構成されていて、平面的なんです。日本家屋は歩き回るようにできておらず、借景という言葉があるように、座って一箇所から場所を固定してみるという前提でできている。なので、空間の鑑賞距離や可動領域で芸術作品が規定されるなと改めて思いました。日本家屋に住んでいたら油絵なんて描かないなって笑。

普段私はホワイトキューブで展示をしますが、経路のようなものを作りたいんです。歩いていくことで現れるみたいな。鑑賞距離と可動距離を操作するということをしたい。

油絵は近代以降、遠くで見るとリアルに見えるが、近くで見ると絵の具でめちゃくちゃ、みたいな手法で発展していったので、油絵は鑑賞者を動かします。

なので、日本家屋のようにじっとしてみるというのが難しいと感じました。


------ホワイトキューブまでは自分が考えて演出できますが、購入後は購入者に委ねることになります。それに関してはどう捉えていますか。


那須:それが結構問題というか、こないだの個展とかも絵に序列が生じてしまうというか。1階の展示には絵が複数枚あるけど、3階には1枚しかないといった構成になる。でも空間は売らないわけじゃないですか。それこそs/s運動に参加した作家のように、モノとしての作品に指示書をつけ購入や所有した人に向けて空間を指定したりとかもできるんですよ。例えば、絵を壁から何cmとか、そういうことをしている人もいるんですよ。でも私は最終的にどんな人も、どんな作家も、インスタレーションとかも剥ぎ取られてモノだけが美術館に押しやられてしまうと思うわけですよ。それもなんかロマンがあるんじゃないかと。意味が剥ぎ取られた上で残っていく作品っていうのがあるので、その強度のバランスを考えながら制作しています。どこに渡っても誰かが残したいと思える絵、みたいな。


------神殿にあった石像が美術館に収蔵されてしまうという構造に対する議論と近いかもしれないですね。


那須:だから展示のインスタレーションにはそんな価値はないと思っていて、作者が情報をものすごくコントロールして渡すっていうだけのことだと思います。私は絵というモノを作れるので潔く絵だけを残すという、その強みを活かしたくて、空間ごと残すということは考えてないです。




インテリアのこだわり


-----那須さんの家やインテリアにこだわりはありますか?


那須:照明ですね。蛍光灯が苦手なので、いろんな照明を置いていて、将来的には照明コレクターになりたいです。


-----おすすめの照明や好きな照明はありますか?


那須:いろんなデザイナーがいますけど、ルイスポールセンとかセルジュムーユとかもデザイン的には美しいですけど、インゴマウラーさんとかは自由だなって思います。

工場でしか作れないようなラインじゃなくて、日用品の感じが好きです。

倉俣士郎のおばQライトは欲しいですけど、美術館で本物を見たらやはりリプロダクト品と線の感じが違うなと感じました。

インゴマウラーのような工夫で、展示用の照明を作りたいなと思っています。


ブランド名「support/surface」の元になったsupport/surface運動についての対話や、那須さん自身の作品への考え方などを伺ったインタビュー後半は、購入者の方にこのインタビューと併せたペーパーにして、ラグと合わせてお送りいたします。

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support/surfaceについて

私たちsupport/surface株式会社は、1960年代末のフランスで起こった芸術運動、support/surface(シュポールシュルファス)運動を引用し、
クリエイターにラグという支持体を通して新たな表現、芸術的価値の組成を試みる会社です。
support/surface Inc. is a company that attempts to create new expressions and artistic values for creators through the support of rugs.
Our company is inspired by the support/surface movement, an artistic movement that took place in France at the end of the 1960s.



Write  :Koki Kakehashi
Photo :Koki Kakehashi

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